依然としてロシアとの間に緊張状態が続くウクライナ。強圧的なロシア軍の全面侵攻に、今もなお国を守るため毅然(きぜん)とした態度で立ち向かう、ウクライナのゼレンスキー大統領(44)に国民の支持ならず全世界で注目が今、集まっています。今回はそんな彼の知られざる7つの事実を紹介します。


若く型破りなウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキー(44)が注目される、今日のウクライナ危機についての7つの事実があります。
1.ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)はホロコースト生還者の孫です。

ウクライナのゼレンスキー大統領(44)は、1978年1月25日、ウクライナ東部の都市クリヴィイ・リで生まれました。彼の家族はユダヤ人であり、よって彼自身もユダヤ人です。
多くのウクライナ系ユダヤ人と同様、その歴史背景にホロコーストの傷跡が残っています。(ホロコーストで殺害されたユダヤ人の約4分の1がウクライナ系ユダヤ人であるという事実は、あまり知られていません。)

2.自分の家族を「普通の旧ソ連系のユダヤ人家庭」と表現している。

旧ソ連に、たくさんのユダヤ人が当時、住んでいました。旧ソ連では宗教的な表現がほとんど禁止されていたため、彼の家族は特に宗教を厳守していたわけではありませんでしたが、その中でユダヤ教の伝統は意識していたといいます。
1990年代初頭にソ連が崩壊すると、多くのソ連系ユダヤ人は外国へと移住を急ぎ、イスラエルや米国に移り住んでいきました。この時、約150万人のユダヤ人が旧ソ連から逃亡したとされています。
ゼレンスキー大統領(44)の大叔母一家は1990年代にイスラエルに移住しましたが、彼と彼の家族はウクライナやロシアに残った数十万人のユダヤ人の仲間入りをしました。

3.人気コメディー俳優出身の大統領です。

ゼレンスキー大統領(44)は法律を学びましたが弁護士として活動したことはありません。大学で演技を始め、やがて自分の制作会社「Kvartal 95」(「Neighborhood 95」)を、彼が育ったウクライナの東部クリヴィイ・リの地域にちなんで設立しました。彼の会社は映画、漫画、テレビ番組を制作しています。
彼はのちにコメディアンに転向し、旧ソ連諸国全土で人気を博し、スタンドアップのパフォーマンスやいくつかのコミック映画に出演しました。
2006年には、ウクライナのテレビ番組「ストリクトリー・カム・ダンシング」で優勝しました。
2015年、彼は「国民の僕」と呼ばれるウクライナで人気のあるテレビ番組に出演し、大統領役を演じました。

4.これまでにない巧みなソーシャルメディア戦略を生かして選挙戦を勝ち取った大統領

大統領選で彼は自身のコメディーセンスを活かし、ユーモラスなスピーチや寸劇をソーシャルメディア、特にInstagramを多用し投稿しました。彼のその一風変わった斬新な選挙運動スタイルが功を奏し2019年のウクライナ大統領選挙で、ヴォロディミル・ゼレンスキーは73%という驚異的な得票率を獲得しました。
しかし彼の大統領への道は必ずしもスムーズではありませんでした。 彼は腐敗した人物に近いという非難に直面し、彼のテレビ制作会社のメンバーを主要な政治顧問として連れてきたと非難されたこともありました。

5.ユダヤ人歴史を認識する

彼が大統領選に立候補したとき、ウクライナの都市ドニプロの首席ラビはニューヨーク・タイムズにこう言いました。『彼は出馬すべきではない。うまくいかなければ、2年後にここで再びポグロムが起こるだろう 』と、その心配は的外れでした。
ゼレンスキーは、ユダヤ人であることを公言していました。彼は、ウクライナ全土の通りや記念碑の名前を変更するプロジェクトを監督し、旧ソ連時代の人物の名前を消し、ウクライナの英雄に置き換えました(場合によってはウクライナ系ユダヤ人を含む)。
彼は、ナチスが10万人のユダヤ人やその他の人々を殺害したウクライナのキエフ郊外の渓谷、バビ・ヤールに記念碑の建設に着手しました。
ポグロムとは:ロシア語の意味で、「破滅、暴力的に破壊させる」という意味を持っています。 歴史的にこの言葉は、ロシア帝国時代にロシアに住む市民が地元のユダヤ人に対して行った暴力的な行為を意味します。

6.ゼレンスキー大統領と裕福なオリガルヒとの関係

ゼレンスキー氏は、2016年の大統領選挙でトランプが行ったように、ウクライナの選挙戦で「エリート」に対抗し絶賛されました。しかし、ゼレンスキー自身が金持ちのオリガルヒとつながっていることは、明らかな矛盾のため、精査されています。
ゼレンスキー氏のテレビ番組を放送した人気のウクライナのテレビチャンネルである1 +1を所有するオリガルヒのイゴールコロモイスキーとの繋がりです。ロイター通信によると、コロモイスキーは「私は彼よりも彼の人形だ」と言い、ゼレンスキー氏は「私に影響を与えることは不可能だ」と反論し両社が問題を否定した経緯があります。
オリガルヒとは:旧ソ連時代のロシアやウクライナ等の諸国が資本主義化(主に国有企業の民営化)される過程で形成された政治的影響力を有する新興財閥。政治、メディア、エネルギー産業を牛耳った勢力。ユダヤ系の人が多い。

7.ゼレンスキー大統領はパディントンベアの声を担当しています。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)は、アニメーション映画のウクライナの吹き替えでパディントンベアとして愛らしい主人公のクマの声を担当しています。
ウクライナでこの映画が公開された際、現職の大統領が登場人物のパディントンベアの声を担当したことが、ウクライナ国外でも注目されました。
おわりに
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)の背景を知れば知るほど、ロシアとウクライナ(旧ソ連)の歴史にはユダヤ人との繋がりがとても深いということがわかりました。多様な民族背景のもと一つのウクライナという国の概念が成り立っているのです。今回すこしでもウクライナという国がもつ背景を知るきっかになってもらえると嬉しいです。