
AUTHOR(著者)について
マイケル・ライトマン博士
哲学とカバラの博士号。メディカル・バイオ・サイバネティクス修士号。Bnei Baruch Kabbalah Education & Research Institute(イスラエルのブネイ・バルーフ・カバラ教育研究所)の創設者兼会長。
第3章 なぜ?
私たちが家に閉じ込められている間、人類による自然破壊から神に対する罪まで、ウイルスの原因についてのさまざまな理論が、ソーシャルメディアに投稿され、広まりました。

世界中の人々が、完全に不意をつかれたこの身のすくむような現象について、原因の説明を求めています。
コロナウイルスはなぜ発生したのかと、そのまま尋ねるのは、あまりにも子どもじみているかもしれません。

パンデミックは何も新しいものではなく、哲学的、神秘主義的、宗教的だとして簡単に却下でき得るものだからです。

例えば、1918年のスペイン風邪や歴史を通して発生した多くのパンデミックでは、ある一定地域を完全に壊滅させています。

しかし、カバラの知恵が説明しているように、この状況を自然法則の理解という観点から見るなら、私たちの生活の中で展開していることに光を当て、新しい考え方を照らし出すことができます。
個人から社会、人類、自然全体の創造と進化を研究しているカバラによると、相互依存というシステムは、健康や感情に関すること、および社会的、経済的、生態学的なすべての問題の背後にある根本的要因です。

コロナウイルスが発生した背後にある原因を、生物学的な研究によって突き止めることは可能でしょう。しかし、そのような研究で見落とされるのは、いかなる生物学的原因も、依然としてより根本的な原因の結果にすぎないということです。

コロナウイルスは謎かけゲームのようなものです。この謎解きは、まさしく人間の進化の次なるレベルへの招待なのです。
進化がつながりを強化する
世界に対する私たちの理解は、人類が進歩するにつれ、自然法則も発見されていく、という事実からきています。
古代世界では、特定の石から鉄や銅へとさまざまな金属に加工する方法、そして各原料からパンやワインといった食品や飲料に変える方法を考え出しました。

その後、科学者は物理学や化学、生物学といった科学で自然の基本要素を説明するため、重力やエネルギーの法則、各原料におけるエネルギー作用といった、さまざまな法則や理論を定式化しました。
新しい法則や理論の発見は、それまで広く受け入れられていた古典物理学に対するアインシュタインの相対性理論など、しばしば既存のものに対する異議によってなされてきました。
私たちの発達や起こることのすべてが、自然の法則の中で繰り広げられています。自然がどのように、なぜ機能しているかを知れば知るほど、コロナウイルスのパンデミックを含む、この世で起こる多くの現象について理解が深まります。

カバラの知恵では、自然のさまざまなレベル間にあるつながりを重要視しています。それはバール・ハスラムが記事「自由」で説明しているとおりです。
「私たちの目の前にある現実には、各要素それぞれの間に全体的なつながりがある。(中略)つまり、鉱物、植物、動物、スピーキング(*)という4タイプからなる世界のあらゆる生き物は、原因と結果の因果律に従っている。(中略)これは、少しの偏見もなく、純粋な科学的観点から自然のやり方を吟味するすべての人にとって明白である」

(*)訳注:カバラでは、欲求を無生物(鉱物)、植物、動物、スピーキング、そしてスピリチュアルと5つの発達レベルに分け、現段階の人間(人類)は動物レベルに含まれる。
スピーキングレベルとは受け取りたいという意志が頂点に達した人間のことで、カバリストとも言われる。
実在するもの一つひとつがすべて相互に関連し合い、あらゆる動きが体系化された影響を及ぼします。さらに、進化を通して、実在の各部はますますつながりを複雑化します。

進化とは、共同作業に基づき、分離した個々の要素を複雑な生命体へといたらせる、生物の発達過程です。そうして、化合物と化合物がつながることで、生きた細胞が進化しました。
その後、植物および動物レベルで多細胞の生命体を発達させるために、生命はより多くのつながりのある基本単位を形作っていきました。

人類もまた、このつながりを増やしていく流れに従って進化しています。約100年前までは、人々は主に自分が育った物理的な環境につながっていましたが、現在の私たちはもっと幅広い環境につながっています。
開発・発展していきたいという願望が、人や地方、国の間のつながりを可能にする手段の創出へ導いていったのです。
電車や電信、ラジオ、電話が遠い場所にいる人と人とをつなげ、インターネットにより、誰もが手早く簡単につながれるようになりました。このつながりへの動きが、世界をより小さく、より身近にさせたのです。

進化論の生物学者で未来主義者のエリザベート・サートゥリス博士は、進化がいかに自然を多様化と個別化に向けて後押ししているかを説明しています。
そしてそのたびごとに葛藤を起こし、やがて共同作業によって、より高度なレベルでのつながりを成立させることで解決するとしています。
したがって、世界が小さな地球村になる過程をたどったことは偶然ではありません。それは、より強く広くつながった形へいたるという、文明の進化の自然な過程なのです。
カバリストは、このつながりを増やしていく発達過程をこう説明しています。自然の法則、つまり自然のシステムで機能する全体的な力は、より高度な連結(リンク)と情報通信網(ウェブ)を作ることで、より相互に結びつく。
『ゾハールの書』の特殊な言葉では、トルドット(Toldot:世代)の部分で、この過程は次のように述べられています。
「人の体は臓器に分かれ、すべてが段階を越えた段階で臓器の上に臓器を作り、それらすべてで一つの体となる。
同様に、世界、すなわち世界の全創造物も臓器の上に臓器がある多臓器であり、それらすべてで一つの体である。
そして、各臓器すべてが是正されたとき、確かに一つの体となるのだ」
今日、世界はある種の「超生物」として、一つにつながった実在である、と口にする科学者はますます増えています。

そして、コロナウイルスによって照らし出された相互責任が、この超生物の存在を確かなものにしています。人間を含む自然の各部は、無数に結びつき、相互に関連しているのです。
世界は変わりました。それぞれがほかから孤立して動く個人主義の世界から、生態学的、経済的、政治的、社会的に賢く健康的で、相互に関連し合い統合された世界、皆が不可欠なグローバル世界へと移行しています。
グローバルとは一つ、つまり全体のことです。

統合とは相互のつながりを意味し、各部すべてが例外なく依存している状態です。
私たちは、グローバルで統合された状態をまだ我がものにしていませんが、私たちがそのシステムに存在しているという事実は変わりません。

自然界はすべてがつなぎ合わさっています。このつながりの奥深さは、カバラの知恵を通して自然の完璧なシステムを研究するにつれ、解明されていきます。
このシステムではつながりのネットワークがますます強くなり、その中で生活を維持し続けるには、私たちの考え方や行動に変化をもたらす必要があるのです。
執筆本(日本語訳)
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